第22回 情報セキュリティと開発途上国

日本からワシントンDCに戻り、少しゆっくりとした時間をすごしています。ここワシントンDCも、日本と同様、かなり暑い日が続いています。

予測されたことでしたが、日本の参議院の選挙の結果は自民党の圧勝で終わったみたいですね。ずっと不安定だった日本の政治も、これで安定するのではないかとの期待が、米国でも論じられています。ただ、本当の意味での日本経済の回復には、やはり日本経済の構造的な改革が必要だとの見方が大勢を占めています。とはいえ、景気回復には国民の経済回復に関する感じ方も大きく関わってくると思いますので、政治が少しでもリーダーシップを発揮してくれればよいのですが。

 

私も、在米国日本大使館に在外投票に行ってきました。投票は、現在の大使館コンプレックスの中にある、旧大使公邸で行われました。旧大使公邸は昭和6年に設立されたそうで、20世紀初めの激動の日米関係の舞台の一つとなった場所です。もしかすると、数ある投票所の中で一番豪華な投票所かもしれません。

旧在米日本大使公邸

旧在米日本大使公邸

米国ではここしばらく、フロリダであった黒人少年の射殺事件の裁判と、米国国家安全保障省(NSA/CSS)が行っている、大規模な盗聴プログラムを暴いた事件が、大きな話題になっています。

フロリダであった武装していない黒人少年の射殺事件は、人種差別からきたものではないかということで、今後、連邦裁判に入る可能性も出てきています。

米国安全保障省の盗聴プログラムは、その対象が米国の友好国をも対象にしているだけでなく、米国国民も対象にしていることが伝えられ、非常に大きな衝撃を与えています。 規模が膨大なことと、電話だけではなく、eメールを含む、電子的な通信に関しての情報を集めているとの情報もあり、マイクロソフトやグーグルなど、多くの人がそのサービスに依存している企業の関与も疑われています。

 

米国国家安全保障省(NSA/CSS)本部

米国国家安全保障省(NSA/CSS)本部 (*1)

公式な見解では、テロに対しての備えであり、アメリカ市民の電子メールや通信の内容は集めていないとの事ですが、これに対しても疑念がもたれています。オバマ大統領も言っていたように、何処の国の諜報機関でも行われているかも知れませんが、政府の国民管理に敏感な米国国民(特に茶会の人々や、公民権に敏感な人々)からは、この政府の行為に対して大きな懸念が出ています。

また、米国の同盟国からの説明圧力がかかっているだけでなく、サイバー・スパイ行為で米国から非難を受けていた中国にとっても、大きな反撃材料になっています。

国家規模のサイバーセキュリティは、私の仕事にも大きく関わってくる事案なので、今回の暴露事件には注視しています。

インターネットで流れている内容が傍受されているというのは、昔から想定されていました。6~7年前に、元米国政府高官と話したときにも、ジョークを交えながらでしたが、電子メールの内容については気をつけるほうが良い、なんて話をしたのを覚えています。ただ、インターネットの中の情報量が指数関数的に爆発的に増えている中、流れている膨大な情報を傍受し、それを精査して、保管するには、膨大なリソースが必要です。ですので、メディアで伝えられているような量の情報を精査し、保存するのはかなり難しいのではないかと思っていました。インターネットのトラフィックが、アメリカを経由することがほとんどの中、このようなシステムが構築されるのは、時間の問題だったかもしれません。

どこの発展途上国でも、インターネットの使用が爆発的に増えています。 インターネットの伸びは、飽和状態になりつつある先進国よりも、発展途上国の方が多くなっています。その中で、情報漏洩やサイバー攻撃に関しての懸念が広がっています。また、早くなったインターネットを、テロリストや犯罪組織に使われることで、サイバー攻撃の踏み台になってしまう場合も増えています。今回明らかになったように、第3国政府が対象国の重要情報を、スパイ行為を用いて収得することは、ますます多くなるでしょう。クラウド上に重要な情報が置かれている場合、クラウドが置かれている国や、経由国の法律が適用されることになるので、開示命令が出た場合、情報の秘匿性が守られるとは限りません。

このような環境の中、発展途上国でも、情報セキュリティの重要性が認識されてきています。例えばルワンダでは、情報セキュリティは国家情報通信技術(ICT)戦略の重要なコンポーネントの一つです。また、国民に広くサービスを提供するとともに、情報漏洩の可能性を少なくするため、データーセンターを国の中に作りました。

アジア地域では、日本もこの分野に積極的に支援を行っていますが、アフリカでは、欧米のみならず、中国や韓国が支援を進めているケースが多いようです。
アフリカの多くの国では、旧宗主国や中国など情報漏洩の可能性がある国に、このような国家安全保障を頼るのは良しとしません。日本は隠れたアジェンダがあるわけではないので、この分野でも、大きなビジネスの可能性があると思うのですが。

 

*1  File:National Security Agency headquarters, Fort Meade, Maryland.jpg, From Wikipedia, the free encyclopedia, Public Commons Information, Wikimedia commons, http://en.wikipedia.org/wiki/File:National_Security_Agency_headquarters,_Fort_Meade,_Maryland.jpg

 

ブログ執筆者執筆者:山中敦之

阪神大震災の際に情報通信技術が災害復興に役立つ経験をして以来、モンゴルを始め世界中色々なところで情報通信技術を国や社会の開発に役立てる活動を行う。2010年初頭よりアフリカのルワンダで情報通信技術の政策アドバイザーをしています。

アフリカは過去に何回か短期出張で来ましたが、長期滞在は千の丘の国であるルワンダが初めてです。自分より日本人ぽいルワンダ人に時に戸惑いつつも、情報通信技術を使った社会・経済発展を進めるべく奮闘中。ルワンダだけでなく近隣国を含め、日本からはまだ遠いアフリカのことを少しでもご紹介できたら良いかと思っております。

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