第17回 米国(世界)経済回復と財政再建

アフリカに戻るのはしばらく先になりそうですので、今回は米国の近況をお伝えします。

今年の初頭は昨年末に起こった小学校襲撃事件のショックから銃規制に関しての話が連日ニュースになっていましたが、2月中旬以降は3月1日に強制執行される“Sequester”と呼ばれる「すべての分野における自動強制歳出削減」が連日ニュースを賑せています。

参政権は勿論ありませんので議員を選ぶことはできませんが、国内だけではなく世界経済への影響が大きいので何とか早く妥協点を見つけてほしいものです。

参政権は勿論ありませんので議員を選ぶことはできませんが、国内だけではなく世界経済への影響が大きいので何とか早く妥協点を見つけてほしいものです。

 

米国議会でおこっている民主党と共和党の財政健全化策に関する対立は非常に深刻です。日本でも報道されていると思いますが、この対立の影響で先の1月1日には強制歳出削減処置の発動とブッシュ減税の延長期限が切れるというダブルパンチ、いわゆる「財政の崖」を越えてしまいました。これを受け緊急避難的に3月初めまで歳出の強制削減処置は延ばされ、その間に国家歳出削減の妥協案を探る事になりました。これらの経緯と影響については色々なところで書かれていますので割愛させていただきますが、その緊急避難的な米国予算の自動歳出削減停止措置が2月末に切れてしまいました。

これは試算によると1090億ドル(1ドルを90円で計算すると12兆円ぐらいでしょうか)にも及ぶ強制的な歳出削減が行われる事を意味します。そうなれば米国のGDPの0.5%から1%に影響が出るそうで 、(*1) そうなると折角上を向き始めた景気が冷え込む事になるだろうと懸念されています。

特にここワシントンDCは連邦政府関連の仕事についている人と、その人たちを対象にした仕事が多いので影響が大きいです。米国では基本的に2週間に一回給料が出ます。これを当てにして貯金が少ない人が多いので、この自動歳出削減が短期に終わった場合でもかなりのダメージがあるとの事です。その上この影響で解雇された人々は歳出削減が短期に終わってもすぐ復職できるとは限りません。また政府機関全体での聖域なしの一律カットなので、たとえば「空港のセキュリティー通過に4時間かかるだろう」といわれています。

議会での民主党と共和党の対立が膠着状態になっているのはアメリカ人の中でも問題視している人が多く、現在の下院の支持率は15.6%でしかありません。(*2) 共和党の内部でも財政再建は何にもまして重要だという原理的な議員(特に「茶会」出身や支持の議員たち)と安全保障などは外せないとする古株の共和党議員との間にも軋轢が生じているそうで、こちらの対立もますます国民の議会に対する失望感を増やしています。

これらの議論は傍から見ているととても不思議です。米国のように国民の購買によって経済が動いている国では、とりあえず国民にお金を回さないとうまく動きません。にもかかわらず経済危機から回復途中の今、国民や市場の自信を損なうような事になる今回の自動歳出削減を党利と原理主義的な点から引き起こしつつある現状を見れば国民に呆れられるのももっともかもしれません(とは言っても他のましなチョイスがなかなか無いのは日本と同様なのですが)。

おりしも安倍首相がワシントンDCに来ました。「アベノミックス」への期待感から為替相場が大幅に円安に振れ、日本市場では「失われた20年」からの脱却に期待が高まっていると聞きます。まだ実際に大きな行動を起こしているわけでもないのに無制限の市場緩和政策とインフレターゲットのような発言だけでこれ程影響が出てくるのは正直驚きです。こうしてみると市場経済というのは「雰囲気」とか「自信」のようなメンタルな影響がものすごく大きいように感じます。

日本の財政赤字は米国に比べても大きく、将来的には健全化に向かわなくてはならないでしょう。しかし経済の回復を進めなければ返せるものも返せなくなります。そのためには適切な財政出動を推し進めるのは有効な方法ではないでしょうか(もっとも本当に国民にお金が回るような投資でなければ効果は薄いでしょうが)。

米国も第一次オバマ政権から行われた総量緩和政策や緊急財政出動を通してようやく経済回復の芽が出てきたところです。今回の強制歳出削減は元々民主党とオバマ政権が財政再建の議論を進めるために提唱したものです。 結果的に自分たちの首を絞めることになったのですが、彼らも共和党がここまで頑なに妥協案の締結を拒むとは思っていなかったのでしょう。

3月1日を迎え議会の対立がどのように解消されるか、また折角上を向いてきた米国経済の回復がどのようになされるのか。米国の動向は世界経済にも大きな影響を与えるため、こちらでは皆固唾をのんで見守っています。

*1
Matthew Boesler, Businee Insider, Jan. 10, 2013, Now It’s Time To Start Talking About The Economic Impact Of A Full Sequester, http://www.businessinsider.com/us-gdp-impact-of-cuts-in-full-sequester-2013-1#ixzz2LYwp9h4W

*2
Congressional Approval Rate, Current – Tally data, real Clear Politics, http://www.realclearpolitics.com/epolls/other/congressional_job_approval-903.html

ブログ執筆者執筆者:山中敦之

阪神大震災の際に情報通信技術が災害復興に役立つ経験をして以来、モンゴルを始め世界中色々なところで情報通信技術を国や社会の開発に役立てる活動を行う。2010年初頭よりアフリカのルワンダで情報通信技術の政策アドバイザーをしています。

アフリカは過去に何回か短期出張で来ましたが、長期滞在は千の丘の国であるルワンダが初めてです。自分より日本人ぽいルワンダ人に時に戸惑いつつも、情報通信技術を使った社会・経済発展を進めるべく奮闘中。ルワンダだけでなく近隣国を含め、日本からはまだ遠いアフリカのことを少しでもご紹介できたら良いかと思っております。

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