第13回 世界の「仕事と子育ての両立」

10月末にルワンダに戻る予定のためまだ家族のいる米国におります。今回はアメリカからのお話になってしまうことをご了承ください。ワシントンDCは木々も紅葉し始め、めっきり秋めいてきました。紅葉を見、朝晩の冷え込みを体感すると、これから季節感のない常春のルワンダに戻るのが不思議になってきます。

秋真っ盛りのワシントンDCではナショナルモールの周りの木も色めいてきました。

秋真っ盛りのワシントンDCではナショナルモールの周りの木も色めいてきました。


ルワンダに戻ってしまうと出張が難しくなるため、妻が1ヶ月弱の長期出張に出かけています。そのためつかの間のシングルファザー兼主夫生活をしているところです。

OECDが出した2009年の統計資料(*1) によると15歳以下の子供のいるOECD加盟国の母親の就職率の平均は66.2%です。アメリカも大体その平均値に近く65%程度のようです。日本は加盟国の中でも就職率が低いほうで、統計を取った34カ国中31位の50%強になっています。

*1 LMF1.2: Maternal employment rates, OECD – Social Policy Division – Directorate of Employment, Labour and Social Affairs, 13 May 2012, Paris, OECD , Family database www.oecd.org/social/family/database

 

他の大多数の例に漏れずわが家も共稼ぎをしています(正確には妻のほうが安定した職業につき私より稼いでいるのですが)。そうなると子供のケアをどうするかが切実な問題になってきます。特にアメリカは産休制度が法律的に確立されていないため、多くの民間企業に勤める女性は特別な産休制度がありません。どうするかと言うと最初に有給を消化し、それが終わると就業不能[所得補償]保険からの補填により休職します。このため多くの女性は出産ぎりぎり(下手すると陣痛が始まるまで)まで働き、その後かなり早くから職場に復帰します。ちなみに先日出産されたYahooの新しいCEOも出産ぎりぎりまで働き1-2週間で職場に復帰するそうです (*2)。このごろは計画的に産休を取りなるたけ仕事に支障をきたさない為に計画的に生む日を決め帝王切開で産む事も多いと聞きます。その後仕事に早期に復帰するためには乳幼児を預かってくれる保育所を探さなければなりません。

ワシントンDCのように土地の高い所でも、福利厚生の一環としてビルの谷間に職場付きの保育園が併設されているところが多くあります。少し見にくいのですが、遊び場があるのがわかるでしょうか? ただ支援があるとはいえ学費が高さとウエイトリストの長さはしょうがありません。

ワシントンDCのように土地の高い所でも、福利厚生の一環としてビルの谷間に職場付きの保育園が併設されているところが多くあります。少し見にくいのですが、遊び場があるのがわかるでしょうか? ただ支援があるとはいえ学費が高さとウエイトリストの長さはしょうがありません。

 

*2 Alexei Oreskovic, Yahoo CEO to return to office one-two weeks after birth of first baby, 1 Oct 2012, San Francisco, Reuteurs, http://www.reuters.com/article/2012/10/01/us-yahoo-mayer-idUSBRE89015220121001

 

妻の仕事場は幸運な事に産休が出る所でそこまでひどくはありませんでした。それでもうちの子供たちも3ヶ月を過ぎたところから保育所に通っています。2010年の国勢調査の結果によると、アメリカで働く女性の63%は親族以外に子供のケアを任せているそうです(*3) 。 日本もそうだと聞きましたが、多くの都市圏では保育所の空きを探すのが難しく妊娠が発覚するとすぐに複数の保育所に願書をだす事が必要です。

また保育所の学費の値上がりも著しく、多くの家族の悩みの種になっています。その中でもワシントンDCは全米でも保育所の価格がとても高く、2011年の統計では乳幼児の保育所の年間平均学費はついに2万ドルを超えました (*4)。ワシントンDCは特別高いのですが、全米をみても乳幼児の保育所の学費が家庭平均収入(両親いる場合)の12%を超えている州・特別区は26あります (*5)。そうなってくると子供が3人以上いる家庭では家計に占める学費負担が大くなりすぎ、さすがにどちらかの親が家に残り主夫・主婦になるケースが多いそうです。

*3 Table 1B. Child Care Arrangements of Preschoolers Living with Mother, by Employment Status of Mother and Selected Characteristics: Spring 2010, Who’s Minding the Kids? Child Care Arrangements: Spring 2010 – Detailed Tables, United States Census Bureau, 5 December 2011, Washington DC, http://www.census.gov/hhes/childcare/data/sipp/2010/tables.html

*4  Cost of Childcare Full Report 2012, pg.26, Child Care Aware of America, Arlington, NACCRA, http://www.naccrra.org/about-child-care/cost-of-child-care

*5  Figure 1, Costs for an Infant in a Center as a Percent of Two-Parent Median Incomes, Cost of Childcare Full Report 2012, pg.17, Child Care Aware of America, Arlington, NACCRA, http://www.naccrra.org/about-child-care/cost-of-child-care

 

子供が小学校に上がると公立学校に進む子が多いため学費負担はかなり減るのですが、小学校の時間が限られているため、学校時間外で預かってくれる所を探すのも大変です。10歳以下の子供を一人にしておく事は、児童虐待に問われる事もあり原則的に難しい所が多い中、学校が始まる前と終わった後に預かってくれる場所が必要です。多くの小学校では学童保育が提供されていますが、定員一杯のところも多く補欠人待ちと言うところも多くあります。また公立の学童保育は午後6時までに児童を迎えに行かなければならないケースが多く、仕事が長引いてしまうと迎えに行くのに一苦労です。何回も迎えに行くのに遅刻をすると児童虐待で行政に告発されてしまいますので、親としても必死です。家も私のルワンダ単身赴任もあり、妻の仕事が長引いてしまったりすると子供を預かっていてくれている施設までタクシーで迎えに行くことが多くあります。
日本より長い夏休み期間中も子供向けの各種キャンプが民間から公的機関まで色々な所で開催されます。特にアメリカは休みが少ない人が多いので家族旅行といってもヨーロッパの様に長くは取れません。親は事前に色々なキャンプの情報を集めそれらから自分の子供に行かせるキャンプを選びます。国際機関などは休みが多いので、子供の休みに合わせて丸々1ヶ月以上休みを取る人もいます。私も国際機関に勤めているときには何故わざわざ混む期間に休みを取るのか不思議だったのですが、いざ自分に子供ができると「なるほど」と納得いくようになりました。

日本と同様に教会などにも保育所が併設されているケースも多くあります。

日本と同様に教会などにも保育所が併設されているケースも多くあります。

日本も待機児童が多く育児とキャリアの両立が難しいと聞きますが、先進国の何所も同じような悩みを抱えてます。ただ色々な話を聞いた感想から推測すると、例えば子供が病気になったときに休めたり、自宅から仕事ができたりと言う柔軟性は他の先進国のほうが高い様に思えます。あえて言わせていただければ、発展途上国などでは人件費がまだ安いためお手伝いさんを雇う余裕ができるので、その分かなり楽に仕事ができます。香港やシンガポールのように近隣国からお手伝いさんを集めてきている国もありますが、先進国では単純外国人労働者の雇用に対しての規制が強いのでそのような事が難しくなります。

労働環境が厳しくまた国際的になっていっている中、ますます育児とキャリアの両立が難しくなっていくとは思います。「男女を問わず優秀な人材を集めようとすれば会社組織としてもワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を推奨することが必要になってくる」と前にある国際企業の人事の方と話したときにおっしゃっていました。

アメリカなどではホワイトカラーのフレックス勤務や在宅勤務などが普通になってきています。アメリカ人は仕事する人が多いので、たいてい子供が寝静まった後夜中過ぎもしくは朝早くに起きて仕事する事になるのですが、在宅勤務がフレキシブルに行える会社が多くなってきているのは非常に助かります。

世界的に雇用状況が厳しくなる中、甘えてると言うお気持ちをもたれる方もいらっしゃるかも知れません。しかし特に賃金の面での譲歩が難しい会社などは、国際的に活躍できる人材を集めるためにかなり色々なベネフィットを掲示しています。今回久しぶりにシングルファザー生活を行って「国際的に競争力を持つ人材を確保するためには日本も徐々にそのようになっていくのか」との疑問が沸き起こりました。

来月はルワンダに戻りますので、3ヶ月ぶりにルワンダからの話になります。

ブログ執筆者執筆者:山中敦之

阪神大震災の際に情報通信技術が災害復興に役立つ経験をして以来、モンゴルを始め世界中色々なところで情報通信技術を国や社会の開発に役立てる活動を行う。2010年初頭よりアフリカのルワンダで情報通信技術の政策アドバイザーをしています。

アフリカは過去に何回か短期出張で来ましたが、長期滞在は千の丘の国であるルワンダが初めてです。自分より日本人ぽいルワンダ人に時に戸惑いつつも、情報通信技術を使った社会・経済発展を進めるべく奮闘中。ルワンダだけでなく近隣国を含め、日本からはまだ遠いアフリカのことを少しでもご紹介できたら良いかと思っております。

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