若者の就職難と「雇用保蔵」

前々回、こちらに「恵比寿会「ぬか喜びの宴」-日本の就活を考える会
http://nankore2.dragon-labs.jp/archives/597

という雑文を書きましたが、M君の自衛隊幹部候補への挑戦は一次試験を突破したものの二時で玉砕、想定通りぬか喜びに終わりました。幹部候補はダメでしたが、その後の曹候補生第一次試験は合格し、こちらも二次試験待ちではありますが、今度はかなり期待できます。そう遠くない将来、本当のお祝いができるでしょう。
しかし、昨春大学を卒業して正社員としての就職ができなかった人の中で、M君のように自分にあった進路を見つけて、着々と準備を進められる恵まれた人はかなり希です。

 

採用試験は、ある意味でスポーツの試合に似ています。先ずは試合日程を調べ、エントリーし、予選を突破して、本戦に進むという事を繰り返さなければなりません。もちろん予選・本戦ともに全力で戦います。そういう試合を門前払いも含めて100連敗もすれば心身共に消耗し、諦めムードになったとしても不思議はありません。
加えて、経済的にもいつまでも親が援助してくれるケースばかりではなく、アルバイトをしつつ就活となるとさらに厳しい条件が加わります。多くは戦線離脱をして派遣・アルバイトに落ち着かざるを得ません。

このような状況にいる若者が日本全体でどれくらいの人数になるかというと、昨年だけで約12万8千人いるようです。これは昨年大学を卒業し就職を希望した人の約1/4に当たります。

「平成24年度学校基本調査(速報値)」文科省8月27日発表。

※「平成24年度学校基本調査(速報値)」文科省8月27日発表。

「平成24年度学校基本調査(速報値)」文科省8月27日発表。

12万8千人は「正規の職員等でない者」、「一時的な仕事に就いた者」及び「進学も就職もしていない者」の合計。
学校基本調査の「就職者」はこれまで、雇用期間1年以上、かつ勤務形態が正社員に準ずる者が含まれていました。つまり1年契約の契約社員などは「就職者」だったわけですが2012年度からようやく「就職者」を「正規の職員・従業員、自営業主」と「正規の職員等でない者」に分けやっと実態がわかるようになりました。

 

さてこれをどう見るかですが、私の全く個人的な見解をのべます。

キャリアの問題は最終的には自己責任を免れません。3/4は就職できているわけですからそれほど狭き門とも言えません。とはいえ、社会的に見れば本人の問題だけではない構造的問題があります。そもそも構造的に需給ギャップがあります。13万人もの供給過剰は昨年だけのことではなく、ずっと続いているのです。

その原因は景気が悪いとか、空洞化とか沢山挙げられますが、一番大きいのは雇用保蔵です。「雇用保蔵」とは最適な雇用者数と実際の常用雇用者数との差、すなわち企業の余剰人員=「社内失業者」のことです。「日本経済2011-2012」(内閣府)によると、2011年9月時点で「雇用保蔵者数」465万人。なおかつ、この保蔵者たちの賃金は高くこれが一人減れば非正規社員が楽に二人雇える原資が生まれます。

ワーキングプワーという悲惨な言葉がありますが、最近は雇用保蔵の社内失業者に対してノンワーキングリッチという言葉も出て来ました。非正規社員対雇用保蔵者という対立の構図です。

昨今の電機業界をはじめとする厳しいリストラの話などを聞くと同じ中高年としては身につまされる思いがしますが、日本の10年後20年後を考えた時に、中高年の雇用保蔵をとるか、新卒者の積極採用をとるかといえば、生き残れる可能性が高いのは明らかに後者だと思います。これは国家を企業に置き換えても同様です。
何も、雇用保蔵者465万人をすべて切れという話ではありません。その1割をカットすればその賃金で、おおよそ過去10年分の新卒非正規および無業者を吸収できます。

 

もう一つの問題は教育です。そもそも供給過剰に陥ったのは大学生が増えたからであり、それは大学を増やしすぎたからだという意見もありますが、これは問題の本質をはき違えています。

大学を減らし大卒が少なくなれば、大卒者の就職率は上がるかもしれませんが、それで若年雇用全体が増えるわけではありません。若年人口が変らず雇用が変らないならば、それは単に大卒の未就業者が高卒の未就業者に替わるだけです。そしてグローバルな競争社会で戦っていく上で、学歴が高い方が有利か低い方が有利か考えてみれば答えは明白です。
ちなみに新興国の進学率が急速に上がってきた中で日本の大学進学率57.6%は国際的に見て決して高くありません。韓国の2010年の大学・専門大学等の進学率は92.8%です。若年失業者の問題は大学進学率を低く抑えることで解決する話ではありません。

問題は進学率ではなくその教育の内容にあるのです。ちょっと長い話になりますので、あらためて次回。

ブログ執筆者執筆者:堀口 卓志

(株)ドラゴン・ラボラトリーズ代表。
なんのこれしき仕掛人。

 

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若者の就職難と「雇用保蔵」 への2件のフィードバック

  1. 稲垣浩作 のコメント:

    本当に遣りたい事で有れば、叶うまでやり続けられると思います。

    本当に遣りたい事が解っていないから、就職先を絞り込めないのでは。
    大学で本気に見つけようとしないと、(遊んでいては)無理だと思います。
    多くは自業自得とも言えるかと思います。

    韓国もインドも社会構造自体が日本とは違う所も有るかもしれません。
    何か、眼の色を変えてやらなければ成らない事が有るのだと思います。
    国が其処に目を向けるべきだとも思います。
    そして質を変えていかないと、解決できない様に思えます。

    稲垣浩作

  2. 堀口 卓志 のコメント:

    稲垣さん。ご意見ありがとうございます。

    大学卒業時点で本気でやりたいことがわかっていてそれが適職であるケースは、大変素晴らしいと思いますが、希だと思います。

    なにしろ職業経験がないわけですから。

    この問題は次回もまた私論を書きますのでお読みください。

    ご意見ありがとうございました。

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