ヤマトナデシコはジャングルに咲くか?

実は先日、シンガポールのAlexと都内某所で会いました。研修で帰日しており、前回のブログがちょっと気になりましたのでシンガポールに戻る前にメシでも食おうと誘って、4人でささやかな会食をしました。1ヵ月の研修の後ですから、たぶん相当疲れていたと思いますが相変わらずパワフルな笑顔でかえってこちらが元気づけられました。海外で戦う上で一番大切なことはこの元気だなあと実感した次第です。

ちなみにAlexは天真爛漫でパワフルではありますが鈍感でも図々しいわけでもありません。繊細にして愛情にあふれ忍耐強く協調性のある、今や絶滅危惧種といわれるヤマトナデシコ科に属する珍種です。

この珍種を目の前にして話しながら、グローバルに活躍する上での要件とパーソナリティの関係についてちょっと気になる学説を思い出しました。

ちなみに学説は物事を判断する上でよく根拠にしますが、後年それが覆ることがあります。どの分野でもあることですが、とりわけ心理学ではそれが頻発します。私は研究者ではありませんが、研究成果の上澄みを使っております関係で、これには時々まいってしまうことがあります。

性格についてもそのような事が度々ありましたので、そのあたりの事情について少し前置きをします。

性格というと血液型を思い浮かべる方も居ると思います。私もよく典型的B型と賞賛されると当たっている気がしないでもありませんが、これを科学的とは思いません。他にも人相・手相、星占い、姓名判断と性格について語る非科学的な勢力があり、それと一線を画して「学説」があるわけですが、この一線がなかなかくせ者です。

たとえば昔大学の心理学の受業では、クレッチマー(1888~1964)の体型説を教わりました(今でも教えているかどうかは不明ですが)。クレッチマーの体型説では、統合失調症(当時は精神分裂病)、躁うつ病、てんかんという主要な精神障害に固有の体型があり、さらに、これが正常者にも当てはまるといわれていました。これは今日では実証に不備があったとして否定されています。

フロイト(1856~1939)は20世紀前半の精神分析学の代表格だったわけですが実証的には、証明されなかったという評価が定まったようです。

このようにして後から「科学」の世界で認められなくなるものが多いと、人相手相血液型と一線を画していたはずの「科学的学説」が、実はたいして違わない事になります。

このあたりが心理学の学説を鵜呑みにはできない理由でもあるわけですが、そのような中でも現在のところ多くの心理学者の同意を得ているものが性格を特性論の立場から整理したビッグ・ファイブ(Big Five)理論です。

ビッグ・ファイブの源流は19世紀に性格を示す用語の収集と整理から始まった特性論です。ここから私もお世話になったYG性格検査、モーズレイ性格検査(MPI)、キャッテルの16PFなど様々な性格検査も生まれてきました(これも現在は多くが否定されています)。これが1990年代になると様々な研究成果をメタ分析すると5つの因子に集約されるという研究が数多く発表され概ねビッグ・ファイブに収束してきたようです。

この5因子と呼ばれる性格の基本的な特徴は、以下の通りです。

  • 開放性因子 Openness        想像力、感受性、知的好奇心等、環境に働きかける
  • 誠実性因子 Conscientiousness    自己統制力や達成への意志の強さ
  • 外向性因子 Extraversion        社交性、活動性、快活さ等
  • 調和性因子 Agreeableness        協調性、利他性等
  • 神経質的傾向因子 Neuroticism    神経症的傾向、抑うつに対する敏感さ

※日本語訳は諸説あります。

さて前置きが長くなりましたが、私はAlexの際だった特徴はビッグ・ファイブの中では調和性(Agreeableness)だと思います。誠実性や外向性も高いのですが相対的に見て調和性の高さが一番の特徴ではないかと思います。

ところがこの「調和性」という因子はビジネスの成功にはどうやらマイナスに影響するようなのです。個人的にはどうも納得しかねる話ですが、かなり多くの信頼できる大規模調査の結果が同様の傾向を示していますので無視するわけにはいきません。

腰が引けつつも長いものには巻かれてみようかというスタンスであれこれ現実を考えて見れば、確かに思い当たる節もあります。また研究の多くは日本で行われたものではありませんから、グローバル・スタンダードは日本以上にそうなのかもしれません。

Alexの成功を祈ると同時に、その性格をこよなく愛する者としては、その調和性が問題だなどとは毛頭思っておりません。むしろそこが強みだと思うわけですが、どの因子であれ、いかなる環境下においても強みとして作用するわけではありません。

調和性因子が非常に低いメンバーと対峙したときにどうするか、熾烈な競争や権謀術策の渦巻く環境下ではどうするか、依存や甘えが発生したときにどうするか、等々対処方法に思いを巡らせながら、とりあえずはみんなで仲良くプリクラを撮って調和性因子の高さを再確認したのでした。

ブログ執筆者執筆者:堀口 卓志

(株)ドラゴン・ラボラトリーズ代表。
なんのこれしき仕掛人。

 

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ヤマトナデシコはジャングルに咲くか? への1件のフィードバック

  1. Alex のコメント:

    先日はありがとうございました。
    とても楽しかったですし、勉強になりました。

    その上、あれからしばらく経過したにもかかわらず、
    私のことで、原稿をひとつ書いていただけるのは、
    大変ありがたく、恐れ多く思っております。

    次回の執筆まで、また紆余曲折ありそうなので、
    また近況をアップデートさせていただきます(^^)

    何かと思い巡らせることが多い日々ですが、
    温かく、厳しく、やさしく、
    引き続きガイドしていただけたら嬉しいです。

    よろしくお願いします。

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