第5回「卒業」―それは「始まり」であって「終わり」ではない

5月26日午後4時半ころ。すべての儀式を終え、名実ともに修士号を得て私のケネディスクール留学は終わりを告げたのでした。

1年間の留学

その短さもあってか、何かを成し遂げた高揚感というよりも、穏やかな寂寥感の方が勝っていたように思います。ともかく、私のアメリカ滞在にも終わりが来たわけです。留学ビザは卒業式の日で切れてしまいます。もう2度とこの国に住むことはないかもしれません。そう考えると、やはり寂しさの方が勝ってしまったのでした。

それは中学校や高校の卒業式で感じた感覚にも似ているものでした。卒業式というのは何歳になってもそういうものかもしれません。

ふと、卒業式当時の朝にもらった式次第を読み返していました。
すると、次のような一文を発見しました。

“The word ‘Commencement’ conveys the meaning of the Latin Inceptio, a term used in the Middle Ages to describe the ceremony that admitted candidates for the degree of Master of Arts and gave them license to begin teaching.”

「Commencementという言葉は、ラテン語のInceptioから来ています。それは中世ヨーロッパにおいては、Master of Artsという学位の候補生に対して、アカデミアに入ることを承認し、また教師として働き始める許可を与える儀式を指すものとして使われた言葉でした。」

すなわちInceptioの語源から、またCommence(始める)という言葉の意味からもわかるように、卒業式とは「始まり」なのです

そしてそれがteaching(教えること)を始める許可を与える儀式だったことからもわかるように、社会への貢献の第一歩を踏み出す儀式でもあると言えるでしょう。まさにいま、この瞬間から始まるのであり、学業はそのための準備なのです

 

Commencement

それは始まりであって、終わりではない

 

留学は終わりました。
しかしそれは始まりであって、終わりではありません。

未来に向けての大事な一歩

なのでした。
ニューヨークからの帰りの飛行機のなかで考えました。
私はハーバードで一体何を学んだのでしょう。

ケネディスクールの卒業式。ある人がこんなことを言っていました。
ハーバードの秘密は、私たちだけにとっておきましょうね

Secrets of Harvard

どこかで聞いたことのあった言葉です。
しかし、「何が秘密なのか?」までは皆目見当付きません。

たぶん、「秘密」の内容は画一的ではありません。
各人それぞれの立場でいろんなことを学んだでしょう。
今回から次回にかけて、そのことについて書いてみたいと思います。
(以下、すべて私見です)

私がふと気づいたのは、学業以外でいろんなことを学んだという点です。
その第一は、ハーバードという大学の経営についてです。
ある人はハーバードはアメリカ最大の非営利組織とも言います。
その経営術には目を見張るものがありました。具体的には3つ挙げられると思います。

 

① ハーバード・コミュニティの醸成

まず第一に、ハーバード・コミュニティというものに対する意識。それは先に挙げた「ハーバードの秘密」という言葉にも表されているように思います。MITやスタンフォードがインターネットの流れに乗って授業の公開を進めているのに対し、ハーバードはマイケル・サンデル教授の授業を除いて、基本的に授業は公開していないそうです。そのことによってコミュニティ、すなわち「仲間意識」を高めようとしているように思えます。

また、先にも紹介しましたとおり、同窓生の交流も盛んなようです。卒業式は5月末だったのですが、同窓会の案内はすでに4月上旬に送られてきていました。「なんて気が早いんだ」と思ったものです。同窓生同士の交流を深める場も多く設定されているようです。

そして極めつけが、サマープログラムのときに聞かされた言葉。
“Harvard will bet on you.” 「ハーバードはあなたに賭ける」
私にとっては、何よりこの言葉が仲間意識を高めてくれました。

このようなコミュニティの醸成は学生の満足度を高め、また同窓生同士の助け合いへとつながることでしょう。私が通った日本の某大学ではなかったことです。(最近は多少変化が見られますが)

(つづく)

 

ブログ執筆者執筆者:藤村慎也

18歳まで愛媛は松山で育ち、大学進学のため上京。初めての大都会で右往左往しました。そんな田舎者が、30代にしてあのハーバード大学への出願を決意。苦節の末に合格を果たします。このブログでは、出願準備から修士号取得までを振り返りつつ、米系経営コンサルティング会社で働いた経験も踏まえながら、日米の人材育成観や方法論の違いを考えます。グローバル人材育成へ取り組む方、グローバル人材として活躍したいと思っている方のお役に立てるメッセージを届けられればと思います。

好きなアーティストは長渕剛。好きな歌は「西新宿の親父の唄」。居酒屋の親父が売れない歌手志望の若者に鯛の刺身をご馳走して言う「出世払いでいいからとっとと食え」というフレーズが好きです。

ハーバード留学記を綴ったブログ
Ask what we can do: 夢を楽しみながら紡ごう!」も合わせてご覧ください。

 

シリーズ :
「ハーバードは何が違うのか!?
~30代からのグローバル人材育成留学体験記~」

 


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