第2回「卒業」— それは独立宣言であり、社会に貢献できることの証明でもある

「卒業」— それは独立宣言であり、社会に貢献できることの証明でもある卒業式では学部生のスピーチに引き続き、大学院生の代表によるスピーチも行われます。ハーバードでは、成績最優秀の総代がスピーチするという訳ではありません。実は卒業式の数ヶ月前からから始まるコンペで決定されます。数ヶ月前に大学全体にメール等で通知がなされます。それに呼応するように、スピーチしたい人たちはスピーチの内容を考え始めます。スピーチの内容が固まってきたら、今度はスピーチの練習を行い、そしてコンペに出場するのです。コンペで選ばれた人が、卒業式でスピーチすることになります。必然的に、内容、演説、ともに優れた人が選ばれることになります。日本と違って、紙に書かれた、かしこまった文章をうつむき加減に読んでいくというようなことはありません。だからこそ、前回お話したように「アイ・ラヴ・ユー」という愛嬌を振りまくこともできるのでしょう。そうやって、オバマ大統領のようなすばらしい演説家が育っていくのですね。日本も見習いたいものです。

 

さて、話を本題に戻します。ロースクール、メディカルスクール、ビジネススクールといった錚々たる顔ぶれの中から選ばれた院生代表は我らがケネディスクールの同級生でした。彼はウェールズ出身のイギリス人。大学院の外国人比率はかなり高いとはいえ、やっぱり驚きです。ここでアメリカ人にこだわらないところも、アメリカの懐の深さでしょうか。我らが同級生は、ケネディスクールに来る直前までイギリス議会の国会議員を務めていました。さすが、貫禄のスピーチです。

まずは自分がイギリスから来たということで、”I came here to apologize…” (「今日は(植民地のみなさんを苦しめたことを)謝りに来ました」)と切り出しました。みんな、「これはいったい何のスピーチだ!?」と思い意表を突かれます。”さらに、Thanks for leaving us Canada.”(「カナダだけは(植民地として)残してくれてありがとう」)と、ホロ苦だけど、イギリスっぽいジョークを飛ばします。会場の人々は一気にそのスピーチに引き込まれていきます。この種の悪ふざけ的な冗談は、日本の卒業式ではなかなか見られませんね(笑)。

それはもちろん、あくまで伏線でした。実は彼の故郷、ウェールズの出身者の中にはアメリカの独立のために働いた人もいたのだそうです。その闘う先祖の姿を、彼は自分たち卒業生のなぞらえました。

私たちは今日、ここで卒業します。すなわち、独立を宣言します。
(独立宣言―declaration of independence)

独立-独り立ちと訳した方が良いかもしれません。

学位を得て卒業するということは、「独り立ち」を意味する―彼は私たちにそう語りかけてきたように感じました。

そして「独り立ち」は、決して自立して生きていくことのみを意味するのではありません。

それは引き続いて行われた学位授与でのことでした。学部から各種大学院まで、ひとつひとつ、学位が授与されていきます。日本と違って、ここでは誰も壇上に上がりません。ただ学位の授与が学長によって宣言されていくだけです。いよいよ我らがケネディスクールの順番がやってきました。

“By virtue of authority delegated to me, I confer on you the degree for which your studies have qualified you and testify that you are well prepared to have a leadership in the quest for enlightened public policy and effective public service throughout the world. Congratulations.”
「あなたに学位を授与し、世界中あらゆる場所においても、開かれた公共政策と、優れた公共奉仕の実現のため、指導力を発揮する能力を有することを、ここに証言します。おめでとう。」

そう、私たちは世界に飛び出し、社会貢献できる人材となったことを宣言されたのです。独立宣言と共に、社会に貢献できる人材となったのです。

この瞬間、ケネディスクールの卒業生たちは、手にしていた地球儀の風船を次々に真っ青に透き通った空に投げ込んだのでした。

 

ブログ執筆者執筆者:藤村慎也

18歳まで愛媛は松山で育ち、大学進学のため上京。初めての大都会で右往左往しました。そんな田舎者が、30代にしてあのハーバード大学への出願を決意。苦節の末に合格を果たします。このブログでは、出願準備から修士号取得までを振り返りつつ、米系経営コンサルティング会社で働いた経験も踏まえながら、日米の人材育成観や方法論の違いを考えます。グローバル人材育成へ取り組む方、グローバル人材として活躍したいと思っている方のお役に立てるメッセージを届けられればと思います。

好きなアーティストは長渕剛。好きな歌は「西新宿の親父の唄」。居酒屋の親父が売れない歌手志望の若者に鯛の刺身をご馳走して言う「出世払いでいいからとっとと食え」というフレーズが好きです。

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「ハーバードは何が違うのか!?
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