第1回「卒業」— 何のために大学に行くのか

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DSCF4881 / COSMOSNEXUS

5月終わりの明るい日差しの中、私はハーバード・ヤードと呼ばれる中庭に立っていました。その日はCommencementと呼ばれる、卒業式の日。学生生活を振り返り、自らが達成したことを振り返るとともに、切磋琢磨しあった仲間とお別れする日でもあります。緊張の中にも高揚感がある、そんな笑顔に溢れていました。

 
 

その日の朝6時30分、私は母校となるハーバード・ケネディスクールに向かっていました。卒業式は、早朝の写真撮影から始まります。ガウンに身を包んだ同級生たちと言葉を交わします。その後、ハーバード・ヤードの卒業式場に移動するため、街中を行進します。ハーバード・ヤードでまずはハーバード大学全体の卒業式が行われ、その後、それぞれの学部・スクールの卒業式が行われます。

 

私たちケネディスクールの学生が卒業式場に入場し終えたのは8時50分。既に2万人とも言われる学生の両親兄弟・親戚で埋め尽くされています。なんでも朝6時から良い場所をとるために並んでいる人もいるのだそうです。卒業生の数も7,000人。皆が一堂に会して行う卒業式は、まさにスペクタクルです。

 

朝の集合から既に2時間が経過していました。でも式次第を見ると卒業式が始まるのはなんと9時45分!まだ1時間もあります。当然、みんなじっとしていられる訳はありません。各々立ち上がったり、足を伸ばしてリラックスし、友人と語り合ったり、気ままにその時間を楽しんでいました。

 

こんなところからして、ちょっと日本の大学とは雰囲気が違います。

 

9時45分。いよいよ卒業式が始まります。最初にシェリフと呼ばれる人が壇上に上がり、式の開会を宣言します。
“… now declares that the meeting will be in order…”
こんな表現は初めて耳にしました。そのしゃべり口がまた特徴的で、式のムードは最高潮に高まります。そして、”Please rise.”(「起立」)の掛け声の下、一同立ち上がり歌の斉唱を行います。

その後、まずは学生によるスピーチが行われました。1人目は学部4年生によるラテン語のスピーチ。次は同じく学部4年生による英語のスピーチ。そして大学院生による英語のスピーチへと展開していきます。

ラテン語は何を言っているかさっぱりわかりませんでしたが、次の学部4年生の女性による英語スピーチはよくわかりました。日本の卒業式とは一風変わったカジュアルな雰囲気で壇上に上がり、手を振って “I love you.” などと愛嬌を振りまきます。友人によれば、アメリカの大学には彼女のようなスター的存在が往々にして見られるのだとか。彼女は大学時代に学んだ3つの柱として、アカデミック、同級生、実社会への還元について語りました。見かけは一見ギャル風でしたが、スピーチの内容は優等生そのものでした。

アカデミック(学問)、同級生、実社会への還元 = 大学教育の三本柱

 

私はこの言葉を聞いた瞬間、「なんてこった!」と思いました。あまりにも基本中の基本なのに、日本ではそれがどの程度実践されているのか自信がなかったからです。いま経済界が求める人材像と教育機関が送り出す人材にズレがあるとすれば、その根本原因はこの辺りにあるような気がします。特に最後のところ、

 

実社会への還元

 

これこそ、いま日本の若者の人材育成に最も欠けているものではないでしょうか。アカデミックなもの、一見学術的と思えるものも、その多くは実社会に還元しうるものだと思います。日本の課題は、その還元の仕方を教育に取り込むことだと考えます。すなわち、

 

日本にはアカデミックな学びを社会に還元するための教育が欠けている。

 

こう思うのです。

 

本ブログでは、まさにこのテーマについて考えていきたいと思います。次回も引き続き、卒業式で受けたショックについてお話します。

 

ブログ執筆者執筆者:藤村慎也

18歳まで愛媛は松山で育ち、大学進学のため上京。初めての大都会で右往左往しました。そんな田舎者が、30代にしてあのハーバード大学への出願を決意。苦節の末に合格を果たします。このブログでは、出願準備から修士号取得までを振り返りつつ、米系経営コンサルティング会社で働いた経験も踏まえながら、日米の人材育成観や方法論の違いを考えます。グローバル人材育成へ取り組む方、グローバル人材として活躍したいと思っている方のお役に立てるメッセージを届けられればと思います。

好きなアーティストは長渕剛。好きな歌は「西新宿の親父の唄」。居酒屋の親父が売れない歌手志望の若者に鯛の刺身をご馳走して言う「出世払いでいいからとっとと食え」というフレーズが好きです。

ハーバード留学記を綴ったブログ
Ask what we can do: 夢を楽しみながら紡ごう!」も合わせてご覧ください。

 

シリーズ :
「ハーバードは何が違うのか!?
 ~30代からのグローバル人材育成留学体験記~」

 


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