第25回 アフリカへの日本の売り込み方(3)

10月の終わりに、4泊5日と本当に駆け足だったのですがルワンダに戻りました。
トランスフォーム・アフリカという、ICTを使ってアフリカの開発をどのように進めるかというテーマの国際会議(国連・国際通信技術連合 ITUとの共催)が5年ぶりにルワンダで開かれる事になり、それに個人として参加(とはいえ、あるセッションのファシリテーターとしても担ぎ出されたのですが)してきました。

久しぶりのルワンダは相変わらずの建築ラッシュで、去年末にはできていなかったビルも完成していましたし、大きなシネマ・コンプレックス(3D映画も上映するそうです)もできていました。 米国で映画を見るのと同程度の値段のする映画館に、いったいどれだけの人が来れるのか疑問ですが、こういった物が出来るのは、経済発展のスピードが進んでいるあかしです。

今回のルワンダ訪問では、会議場で元の同僚と話す機会が多くあり、ゴシップから現状まで色々な情報を得ることが出来ました。 来年初頭から、4半期に約1か月程度ルワンダに戻る事になりそうなのですが、それの準備段階の情報集めという点でも非常に有意義でした。

前々回からアフリカ諸国での中国と韓国の台頭については書かせていただいておりましたが、今回の会議ではその傾向が顕著にでており、韓国勢一色で埋め尽くされていました。 この国際会議に付随してIT関連の展示会も開かれていたのですが、その展示会場を埋め尽くしていたのは韓国テレコム、サムスン、LGでした。 エリクソンやテレコム会社、他の国際的な企業、そしてカーネギーメロン大学院もブースを持っていましたが、目立つ場所で大きな展示スペースを持っていたのは韓国勢でした。

今回は会議のテーマが汎アフリカという事で、7か国の国家元首の他に、アフリカ各国を初めとする世界各国から、政府・民間・シビル・ソサイエティの人々が参加されていましたので、IT関連分野でアフリカビジネスを狙っている韓国の会社にとっては、非常に良いPRの場所だったと思います。

トランスフォームアフリカイベントでの7か国元首によるオープン・フォーラム

トランスフォームアフリカイベントでの7か国元首によるオープン・フォーラム

今回の会議でも明らかになりましたが、韓国はルワンダを自国のICT技術のショーケースにする姿勢を見せています。今後アフリカ各地でブロードバンドが急速に伸びていく事が予想されています。それらの国へ韓国のICT技術・製品を売るためのテストケースかつショールームとして、戦略的にルワンダを整備しようという事だと思います。その一環として、次世代携帯システムであるLTE網建設に多大な投資を行う予定です。今回の会議では、韓国テレコムと政府系通信企業との新たな合弁会社の設立が調印され、今後5年間の内にルワンダ国中をカバーするLTE網建設に乗り出すことになりました。

ルワンダは人口密度が高く政治的にも安定しているので、アフリカ市場のテストケースとして、多くの会社がパイロット事業を行っています。 前にもご紹介したかもしれませんが、このパイロット事業の面白い事例としては、クレジットカード会社の「ビザ」が、アフリカ全土に爆発的に広がっている携帯電子マネーシステム間の決算システムのパイロット事業を行っています。

これらの企業は、アフリカ市場広域にビジネス展開をする前に、ビジネスモデル・技術・サービスなどがアフリカ市場に合うかという事をルワンダでテストし、ルワンダでうまくいった事業を他のアフリカ市場に展開する事を行おうとしています。

トランスフォームアフリカイベントでの韓国勢

トランスフォームアフリカイベントでの韓国勢

今回の会議では韓国勢の勢いにあらためて驚かされたのですが、幸いな事に6~7社ほどの日本の企業の方々も参加されておられました。アフリカですでに商売をされており、ルワンダを含めた他の国での展開を探られている方、そして新規にルワンダや他のアフリカ地域での商機のリサーチをされている方々です。多くの方はTICAD-Vのアフリカ・フェァにも参加されており、アフリカ市場の可能性にご興味を持たれ、ルワンダまでいらしてくださったようです。

バタバタしている中ではありあましたが、参加された方々とお話しすることが出来ました。本来ならば、もう少し情報提供やネットワーク作りのお手伝いが出来ればよかったのですが。中にはこのブログを読んでくださっている方もおられ、将来の日本企業のアフリカ進出に少しでもお役に立てればとの思いを深めました。

さて、今回も前回に引き続き、日本とアフリカとの関係の深化のために出来るのではないかと思うことについて私見を書かせていただきます。

前回、前々回は、啓蒙活動や(日本語での)情報提供を通じて日本とアフリカのビジネスを強化する必要性について述べました。 今回は、実際にリサーチをされ、アフリカ市場に興味を持った方が、次のステップとして何をすれば良いかという事を考えました。

イノベーションの世界では、よく「破壊的な技術」が新しい価値観と市場を開拓すると言われる事が多いと思います。 もともとは経済学者のシュンペーターが提唱した「創造的破壊」から進化してきた理論だとおもいます。しかし、既存の企業にとっては進化型の技術・サービス革新を進める事には積極的に取り組めても、海の物とも山の物ともつかない新規事業(新技術)を進める事に躊躇するのは、無理もありません。

しかし、現在競争力のある既存の企業(特に大きな企業)にしても、新規顧客と新市場を開拓していかなければ、いずれ淘汰されてしまいます。多くの企業でもかなり危機感を持っているとは思いますが、リスクを忌避する企業カルチャーを変革するのは(特に大きな会社ほど)難しいと思います。

このような時に、まったく新しい事業に挑戦できるように小さなプロジェクトグループや子会社を作りリスクを取りやすくする事が良くあると思います。 これは新たにアフリカとの商売を考える場合も同じだと考えます。 アフリカでの事業に興味があるという企業の方に、よく「パイロット・ベースで、小さなイニシアティブを立ち上げるのはどうですか」とお話ししています。 とりあえずリスクを取れる程度に小さなイニシアティブを施行する事は、その国の現状や市場をテストするという意味で非常に有効だと思われます。

「そんなの当り前」と思われる方も多いとは思いますが、そうはいっても最初の一歩を踏み出すのは簡単ではありません。 特に、パイロット事業を行うにしても現地での適切なパートナーを探す事は重要で、それがうまくいかなければ成功は難しいと思います。

一つの例ですが、自分の業界では、企業の連合体である現地商工会議所などを戦略的に使ってくださいとお話をしています。特に新規参入の場合、その業界全体の信用が関わってきますので、かなり有望なパートナーを進めてくれると思います。

ルワンダでは、「とりあえずパイロットベースで一度イニシアティブをしてみませんか」とお声掛けをして、現在何社かからお話を頂いております。これを最初のきっかけとして、日本とのWin-Winの関係が深化して行くよう頑張ります。

 

ブログ執筆者執筆者:山中敦之

阪神大震災の際に情報通信技術が災害復興に役立つ経験をして以来、モンゴルを始め世界中色々なところで情報通信技術を国や社会の開発に役立てる活動を行う。2010年初頭よりアフリカのルワンダで情報通信技術の政策アドバイザーをしています。

アフリカは過去に何回か短期出張で来ましたが、長期滞在は千の丘の国であるルワンダが初めてです。自分より日本人ぽいルワンダ人に時に戸惑いつつも、情報通信技術を使った社会・経済発展を進めるべく奮闘中。ルワンダだけでなく近隣国を含め、日本からはまだ遠いアフリカのことを少しでもご紹介できたら良いかと思っております。

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